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アリオン100.jpg法政大学アリオンコール HISTORY

特別寄稿 昭和初期の合唱祭、安井義雄とあげよいざ

p179.gif男声合唱団 東京リーダーターフェル1925 0B
男声合唱団 リーダーターフェル ジルヴァーナ一
                    関ロ ー郎

 アリオンコール創立70周年を迎え、おめでとうございます。お祝い申し上げます。
平成8年10月11日 ターフェルの森田 修、アリオンの現役2年生、杉野芳雄、小泉徹郎の諸君が、蕨市に住む私を訪ねて来られました。
伺えば、アリオンが70周年を迎え部史を作るため、私が昭和55年に、ターフェル55年史を編集しましたので、次の3点の要請でした。
①昭和6~10年の合唱祭のプログラムに、アリオンが載っているので、部史に掲載したいので貸して欲しい。
②「あげよいざ」作曲の、安井義雄氏について教えて欲しい。
③アリオンとの交流について教えて欲しい。

1.昭和初期の合唱祭(コンクール)
 私は昭和9年18歳のときターフェルヘ入団し、その年出場した第8回競演合唱祭で、2等に入賞したことはとても嬉しかったです。課題曲「霊泉」選択曲「出猟の歌」を歌いました。
 このとき出場された法政大学アリオン合唱団は、選択曲に「猟人の別れ」を歌われました。
 戦前の合唱祭で、第1回の昭和2年より16年まで15回連続出場した団体はリーダーターフェルだけで、貴重な実績を持ったと思います。

2.安井義雄さんの思い出
 安井さんと私は、昭和9年の同じ時期にターフェルに入団、昭和60年1月2日76歳で亡くなられる迄、50年の長いお付き合いでした。

 安井さんは楽譜の印刷を仕事とし、合唱曲の編曲もよくやられ、ターフェルにもヤスイガクフ印刷のものや、安井義雄編曲の楽譜が数多く残っています。
 私の手元に、次の楽譜があり愛用しています。

*世界の名歌「男声合唱」  安井義雄編
 昭和30年8月20日発行 好楽社120円
*MannerChor「アリオン愛唱曲集」
              ヤスイガクフ印刷

 アリオンやターフェルが現在盛んに歌っている「あげよいざ」は、安井さん作詞、作曲のたった7小節の歌ですが、安井さんは、男声合唱界に永久に受け継がれる珠玉を残されました。この小曲はターフェルの友好団体の、ベルリン・リーダーターフェル、韓国男声合唱団でも、それぞれの国の言葉に翻訳されて歌われています。
 安井さんの提言で、昭和33年3月23日上野の寛永寺第一霊園内「蟻の会」墓地で行われました、「アリの街のマリア」と讃えられた北原怜子さんの追悼会に、ターフェルは荒木宏明指揮で、安井義雄編曲の「生きているマリア」「聖歌」など数曲を捧げました。安井さんのやさしい面を表わす行事だったと思います。

3.アリオンメンとの交流
 596ターフェル(現役とOBの有志の実年、老年メンバー)が、小島休景氏のご紹介でコールアリオンと共催で、昭和61年春、63年春、平成2年の春の3回、新宿・モーツアルト サロンで「楽しいコーラスの夕べ」を開催しました。
 組曲では、書歌劇「ボッカチオ」より恋・結婚・争、「柳河風俗詩」、「月光とピエロ」、「三つの俗歌」、「雪と花火」などを歌いました。
 この数年の間、指揮者の塚本吉成氏、第1テノール河野博之氏、渡辺一幸氏、落合金吾、第2テノールの中田英之助氏、田村有昭氏、バリトンの浜田俊一氏、ベースの川守田佐一郎氏、井口亨氏の皆さんと再会したり、お知り合いになり楽しく思い出しています。

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昭和63年3月5日「楽しいコーラスの夕べ」
新宿モーツアルトサロン 指揮:塚本吉成

アリオンに贈られた「あげよいざ」
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ヤスイガクフより
アリオン最初の愛唱曲集(1958年6月)
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法政大学校歌(塚本吉成編曲)/いざや我等の/うるわしの五月に/
野ばら/わが歌/Stänchen/おやすみ/せわしき流れの河/オレグ公/
夕の鐘/猿芝居/追分/婆やのお家/あしたまで/
Stars of the summer Night/Little Brown church/
希望の島/進めわが同胞よ(U Boj)/Aulld Lang Syne

編集 宮原寛之 白鳥登志雄 小林義雄 塚本吉成

安井義雄氏のことども

☆7小節の素晴らしき作品

 コップにビールを注ぎ、興奮し、或は、感激した顔で、「あげよ いざ さかずき を…」と唄ふ、おなじみ「乾杯の歌」の作詞、作曲者が、安井さんだと知る人は意外と少ない。JAMCAは云ふに及ばず、六大学を始め、殆どの大学、職場で、今やドイツでもドイツ語に訳されて唄われているとのことで、我々にとって「ダイヤモンド」にもまさる、貴重な心の糧になっていると申しても過言ではあるまい。

☆「東京リーダーターフェル編曲」の影武者

 昭和16年以前 即ち 小生の大学生時代に「東京リーダーターフェル編曲」なる男声合唱曲をよく愛唱した。我々の手に届くものであるだけでなく、実に唄いやすく、美しい作品であったので、編曲者が誰であるのか 当然のごとく興味深いものがあった。
 戦後入団の頃でもこの「東京リーダーターフェル編曲」が出るのでそれが安井さんだと判り、失礼だとは思ったが、実名で発表されるよう進言した。ことほどさように はにかみやであった安井さんの今の時代と正反対の(出たがりや 目立ちたがりやの多い今日の現象)常に人々のうしろに隠れている人柄に感服し、反省もさせられるのである。

☆フォスターの作品に対する知られざる研究

 安井さんとおつきあいをし始めたの頃であったので30数年前のことであるが、何かの話のつづきで、さりげない調子で「フォスターの曲は全部durで書かれていますよね…」と、一瞬 耳を疑ったのである。と言ふことは、あの哀調を帯びた曲の数々が全部durである、と誰が信じませう。

全部mollであるといわれればむしろ その方を信じると思われるのであるが、然し durであるからこそ健康的であり、更に心に訴える哀愁と歓びを感ずると言ふ 謎解きにも似た 真因に触れた喜びに感謝の念を抱いたのである。
我々には常にと言っていいくらい饗譜の上を素通りするだけでも きゆう きゆうとしているのに この大切な“心”を教わるまで気にもとめていなかったことを今更のように恥かしくおもったものである。

☆世界中の民謡発掘

 エスペランティストであった安井さんは、誰に頼まれるでもなくただ黙々と世界中のエスベランテイストと交流し特に民謡にと言ふより民謡を通じその底に流れる民族の血とでも申しませうか その "心"に大変興味を持たれ それぞれの国の民謡発掘に心血を注がれました。「東京リーダーターフェル愛唱曲集」の中にも 二、三 掲載されているので承知であろうが、「モラビア」「カタロニア」「エストニア」など と 言われても、その地名が何処にあるものやら 直ちには判りかねるのではあるまいか。
 然しそれらは 例え 小品であっても 名品であり例えばモラビアの「水は流れる」る素敵な民謡である。
 最近の傾向として「かっこ決して悪いとは言わないが愛情溢れる、人間味豊かなTece Vodaなど犇にと心に迫よく」大曲に取組む姿勢は、一見単純でやさしき小品の中にえも言えぬ名曲即ち心を ゆさぶる ものがあることにもう一度振り返ってみては如何であろう。安井さんの残して下さった数々の中から「無言の提言」とでも申すようなものを感ずるのは私 一人であろうか。我々は常に謙虚であらねばならぬ、と思ふのである。
昭和60年1月2日没(76才)安らかに眠り給え。

                     BⅡ小島休景

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