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アリオン100.jpg法政大学アリオンコール HISTORY


初演 2002年11月27日 第52回定演(川口リリアホール) 指揮 田中信昭

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メッセージ  

南 聡

 4曲セットになっています。1曲目「浦島太郎の身の上ばなし」2曲目「泉のほとり(新妻博による小品)」3曲目「記録(non-title)」あるいは Nanjing Tale」4曲目「ある駱駝の身の上ばなし」の各々のタイトルです。
 1曲目と4曲目はフランスのシュルレアリストの一人で第二次世界大戦中、レジスタンス活動に参加し、反ナチス的文筆活動を展開するものの、ゲシュタポに捕らえられて収容所で亡くなった詩人、ロベール・デスノスの詩を堀口大学が訳したもの。2曲目は札幌の詩人でシュルレアリズム的遊戯性を特徴にしている新妻博の詩による小品です。3曲目は主に笠原十九司著の「南京事件」によりとられたもので、軍司令部の「南京城攻略要領における注意事項」や旧日本兵たちの陣中日誌、南京に残っていた欧米人たちの日記や報告文をテキストに利用した曲です。
 4曲とも独立した曲として単独で演奏することは可能ですが、通奏の場合、幾つかの共通項を持ちます。

第一にオブリガードのピアノは華麗に展開することなく極めて節約した表現によって装飾的色調だけの役目におさえられています。第二に、合唱パートには調的でシンプルな旋律、しばしば唱歌や童謡のフレーズの断片が利用されています。これがおそらく作品の本質を引き出し作品を個性化するのに効果があるだろうことを作曲者は期待しています。また、対位法的処理、多様な発声、聴き取り易いテキストの処理からほとんど聴き取れない状態までの扱いも時間上に形成されるドラマのために利用されます。3曲目がタイトルに含まれていないのは、それが全体の暗部でありブラックホール的な存在だからです。そして、テキストは最も聴き取り難い状態に置かれます。ちなみにある「政治家」の言葉の引用は、他者の罪を客観的に理解できても自らの罪は認め難い「人間」の姿の象徴的役割として示され、この部分が「レクイエム」に置ける「怒りの日」に相応する意味が暗示されます。ゆえに、4曲目と音響的に対比され、その4曲目も、2曲目の持つある種の今日的表層性と差異化が図られています。「夜話」的書式ゆえに「セレナーデ」とタイトルしましたがいみじくもその本質は特定の宗教と結びつかないものの「レクイエム」なのです。ただし、情緒的な音楽としてではなく、冷徹に考えるための・・・・・・

出版/録音 なし

演奏

法政大学アリオンコール
定期(第52回〈初演〉)