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アリオン100.jpg法政大学アリオンコール HISTORY


初演 2006年12月4日 第56回定演(国立オリンピック記念青少年総合センター大ホール)
指揮 田中信昭 ピアノ 中嶋 香

委嘱曲に寄せて-作曲者のことば

  田中信昭先生と、アリオンコールの皆さんから、編曲を-という声を頂いた時、私は今回のためだけに限らず、引き続き世界中のあらゆる旋律と、-音楽家として向き合い続けていく決心を、固めていた。編曲と一ロに言っても、人によって様々なアプローチのしかたがあろうかと思う。それはそれでいい。いずれにしても、世界を自分の耳で、眼で、身体で解読していく作業に他ならないのだから、その背後には自分の人生観や、思想・哲学が、意識しようとしまいと反映されることになる。
  今回私が選んだ旋律は、すべて民謡であり、おおまかに言って人間が他の人間を迫害すること-たとえば戦争、そして人種差別-そして、そこへ別の角度から光が降り注ぐように切り込んでくる、“親の子供に対する愛情”という普遍的な2つのテーマが、重要な要素となってくる。“鳥の歌”は、キリストが生まれた瞬間を鳥たちが祝福しているという、大変美しい光景を歌ったものだが、チェロの巨匠カザルスが、故郷のカタロニアの悲惨な歴史を、胸に秘めながら生涯演奏し続けたことで、大変よく知られている。“ダニー・ボーイ”は、戦争で息子を送り出さなくてはならない、母親の歌。

「…私は、ずっと待っている。でも、もしおまえが帰って来た時、花がみんな枯れていて、私が土の下に眠ってしまっていたら、その場に脆き私のために祈りを捧げてくれるのだろうか。私はきっとおまえの足書に気づき、それからようやく安らかに眠ることができるから」。“深い河(ディープ・リバー)”では、河の向こうへ行けばようやく、平和な世界が待っている‥…・と歌う。そして、これらのことばは、決して器用ではないにしろ、私自身の田から出たことばとして語られる。そしてまた、アリオンの皆さん一人一人のことばとしても。
 歌というのは、上手(うま)かろうと上手くなかろうと、自分のロで世間体や常識に惑わされずに、他人や世界への愛情を、表現することである。それが生きる、あるいは“生かされている”ということに伴う責任ではないか?居酒屋で酔っぱらってヘベれけになって歌うのでも、良いのだ。世界への愛さえ、込められていれば。

出版/録音 なし

演奏 

法政大学アリオンコール
定期(第56回〈初演〉、57回〈改訂〉)