印刷用表示 |テキストサイズ 小 |中 |大 |

アリオン100.jpg法政大学アリオンコール HISTORY


初演 1986年12月6日 第36回定演(郵便貯金ホール) 
    指揮 田中信昭 ピアノ 田中瑤子

「とき」はつむぐ

三善 晃

   わたくしの男声合唱作品は数えるほどしかない。            
  昭38「三つの時刻(とき)」早大グリー
  昭45「王孫不帰」法大アリオン
  昭52「ルフラン」法大アリオン
  昭54「クレーの絵本I」関西大グリー
  昭56「ふるさと」法大アリオン
  昭60「王子」法大アリオン
  昭61「路標のうた」法大アリオン・関西大グリー
 (「ルフラン」は編曲、「ふるさと」と「王子」は併せて「縄文土偶」とする)

 すべてが大学の男声合唱団のために善かれ、その多くが法大アリオンの委嘱で生まれた。法大アリオンとのつきあいは、作曲のうちあわせや再演を含めると、もう20年近くつづいたことになる。スタッフの方々との折々の交遊も途切れないできた。そうして今回、初演以来ピアノ・パート譜の行方が解らなくなっていた「三つの時刻」を、その初演のライブ・レコードから採譜・復元して、法大アリオンが再初演(?)して下さることになった。「三つの時刻」は、合唱曲の書法としては「五つの童画」(昭43)につながり、そのピアノ書法はその後の独奏曲や室内楽曲のピアニズムにつながっている。こうして、法大アリオンとわたくし、わたくしとピアノ、という関係を、「とき」はうがち、つづり、つむいできた。あらためて、さまぎまな出会いの恵みを倖せに思う。それらの出会いを私に与えて下さった田中信昭さん、採譜に御協力下さった小沢さち・沼尻竜典のお二人に、心から感謝申し上げ、演奏会の御成功を祈ります。

三つの時刻

三善 晃

  昭和38年、早稲田大学グリークラブの委嘱で作曲し、石丸寛さんの指揮で初演された。その初演時のピアノ・パート譜が無くなってしまったため、以来、演奏されることがなかったが、この度、初演時の記録レコードから採譜して原曲を復元した。これにより、法政大学アリオンコールが再初演している。

 私には初めての男声合唱曲であり、「小さな目」や「麦藁帽子」などと同じ年の作品なので、私なりに懐かしく、20余年を経て復元・再初演の機会を与えて下さった田中信昭さんとアリオンコールに心から感謝している。
 一曲目の「薔薇よ」だけはア・カペラだが、それを含めた合唱パートの書法には、その後のそれにつながるものがあり、また、ピアノ・パートは「五つの童画」のピアニズムに通じると思う。
 丸山薫の詩に、高校時代の私は率直な共感を持っていた。作曲時(30歳)の私はその率直さを大切にしようと心がけた。そのことが、今の私にも意味のあることに感じられる。

(カワイ出版譜のための解説)

≪一つの原風景を蘇らせて≫    

三善 晃

 ≪三つの時刻≫は、合唱組曲《小さな目≫や《麦藁帽子≫と同じ昭和38年に作曲、石丸寛さん指揮の早稲田グリークラブが初演してくれた。しかしその初演時のピアノ・パート譜が紛失してしまったために、その後20年余り、再演されることがなかった。それを、田中信昭さんと法政アリオンコールが再初演して下さるというので、昭和61年に初演時の記録レコードから採譜して23年ぶりに復元した。有難いことだった。

 このごろ男声合唱曲を書く機会が増えてきているが、この曲は私の初めての男声合唱曲である。男声であることから、丸山薫の詩をためらいなく選んだ。高校(男子校)時代、私は彼の諸に率直な共感を覚えていた。詩人の孤高を堅く閉じ込める毅さ、潔さのなかに、ひそかに燻じられている高貴な贅沢さ、それに魅かれた。ここでの音楽の造りはその後の合唱曲の書法に脈絡し、特にピアニズムは≪五つの童画≫のそれを予感していると思う。アリオンの再々演に感謝と期待を贈りたい。

            (第42回定期演奏会プログラムより)

出版 カワイ出版

路標のうた.gif

録音

cdtitle.jpg
高須道夫指揮 クール・ジョワイエ ビアノ 高橋寛樹
(ブレーンCD)

演奏 

法政大学アリオンコール
法関(第26回〈合同〉)
定期(第36回〈初演〉、第42回)

  関西大学グリークラブ、クール・ジョワイエ、明治大学グリークラブ、名古屋大学男声合唱団、甍会、東京大学音楽部コールアカデミー、栗友会、合唱団パリンカ ほか