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アリオン100.jpg法政大学アリオンコール HISTORY


初演 1986年6月15日 第25回法関(浅草公会堂)  指揮 田中信昭 ピアノ 田中瑤子

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「路標のうた」との出会い

三善 晃

 法政大学アリオンと関西大学グリーから、二群の男声合唱のための曲を委嘱された。テキストは木島始さんの詩と決まり、かねてそれを願っていた私には二群の男声合唱という難しい課題とともにやりがいのある仕事となった。
 木島さんから多くの詩作を頂戴した。それらは今、私の心の中に息づいているが、いつかは音の姿をして立ち上がるだろう。それらと向き合っている時間が長すぎたので、木島さんは多分しびれを切らして、新しい詩を書いて下さった。それが「路標のうた」である。

 別の作品のためにこの仕事が中断し、5月下旬にやっとお渡しする仕儀になったことを深くお詫びしたい。
「青春」が、手易く手に入れることのできる共感で確かめられるものならば、それは私にはなかったが、それが「途方もない出会いを待つ廻り道」としての宇宙を実感し始める時期ならば、それは私にもあった。「君」と「誰」が重なり、あるいは離れ、それらの多層からだけ自分を推し測る混迷の、しかし限りなく熱く広い時空が。
 そのときの願いと不安、それは輪郭を持たなかったが実体があった。そしてその実体こそ「夢」と呼ばれるに相応しいのであろう。
「路標」はまた、今なお戸惑いつづける私にとって、既に通り過ぎたものではない。それは歩む人生の向うにまた見えてくる。はからずも、例えばこの「路標のうた」のように。

自作自注

木島 始

 じぶんの作品について、文章をあらたにつけくわえて書くというのは、じつは易しいことではない。作品は、公表されてしまっており、それぞれの印象をすでに持たれてしまっているのだから、余計な言葉は、たとえ作者のでも、耳ぎわりになりかねない。
  「路標のうた」は、題名を英語にすると、Song of the Guidepostsで、単数でなくて複数の路標を心に浮べてほしい。

路標というのは、文字どおり道路標識のことだが、車の運転をやらないわたしでも、これを忘れては資格がなくなるだぞうということぐらいは、わかっている。
 ただ、この「うた」での路標は、かたちのない、というか、かたちをこえたミチシルベ、各人ひとりひとりの、また、ひと対ひとの、また、それぞれの人の集まりのミチシルベ、つまるところ、掴まりそうでなかなか掴まえどころのない、こころのミチシルベで、どういうミチシルベを心に浮べるかは、各人の自由というわけだ。
 曲の声を聞きおわって、ふと仔んで、どんな路標をおもいうかべていただけるだろうか?

路標のうた

三善 晃

 いつかは木島始さんの詩で音楽を書きたいと念じていた。
 法政・関西:両大学の合同演奏会のための曲を委嘱され、木島さんが法大の先生でいらっしゃることを知って、一も二もなく木島さんに意を通じさせていただいた。結局、木島さんはそのためにこの詩を書き下ろして下さった。作曲にあたって読ませていただいた木島さんの詩作に、私は、全人的ともいえる共感を改めて覚えた。憧憬、と言ってもいい。

 詩に添って曲は起伏し高揚するが、それは迷いのない進行でも翳りのない倖せでもない。苦渋が生む優しさ、絶望が育てる愛がこの曲を遠近法となるだろう。
 初演(昭和61年6月)のとき、遅れて駆け付けた私のためにもと、二度演奏して下さった指揮の田中信昭さんに改めて感謝申し上げたい。

(カワイ出版譜のための解説)

出版 カワイ出版
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録音 なし

演奏 

法政大学アリオンコール・関西大学グリークラブ
    法関(第25回〈初演〉、第26回、第44回)
    定期(第36回〈単独〉、第58回〈OB合同〉、第62回〈OB合同〉)

    東京六大学合唱連盟、クール・ジョワイエ、北海学園大学グリークラブ、甍会、早稲田大学グリークラブ、明治大学グリークラブ、淀川工業高校合唱団、名古屋大学男声合唱団、東北学院大学グリークラブ、Tokyo male choir kuukai ほか多数